アメリカの医薬品市場調査会社・EvaluatePharmaは、2010年中にアメリカ市場で特許切れを迎える先発薬の売上規模は約120億ドルと試算している。
09年時の189億ドルに比べると、やや小康状態だが、業界全体が危惧する特許切れピーク2011年の259億ドルを前にした「嵐の前の静けさ」と指摘する声もある。
10年中に特許切れとなる先発品の中で最も大型といわれているのが、世界初のセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害作用をもつ抗うつ薬として上市された塩酸ベンラファキシンの徐放製剤・エフェクサーXR。昨年10月にファイザーに買収されたワイスの売上高トップ商品で08年の全米売上高は27億8000万ドル。ただ、既にワイスは08年に同社が発売したエフェクサーXRの後継品で塩酸ベンラファキシンの活性代謝物質であるプリスティク(一般名・デスベンラファキシン)への切り替えを推進していた。
また、メルクの高血圧治療薬・コザール(一般名・ロサルタンカリウム)と、コザールとサイアザイド系利尿薬・ヒドロクロロチアジドの合剤・ハイザールもジェネリックの攻勢に曝されそうだ。2剤合計の全米市場売上高は12億8000万ドル。
ARBでは初の特許切れで、かつメルクにとってはアレルギー治療薬シングレア、高脂血症治療薬ゼティア/バイトリンに次ぐ売上規模であることから、ジェネリック登場の影響は少なくないと見られている。
アルツハイマー型認知症治療薬のアリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)も今年末に特許切れを迎える。実際に、ジェネリックによる売上減が始まるのは11年以降と考えられているが、開発元のエーザイと販売提携するファイザーは、同分野でフェーズ3に入っている旧ワイスの抗Aβ抗体bapineuzumabやMedivaition社からライセンスを取得した非選択的抗ヒスタミン薬dimebonの2剤でこれに備えている。
一方、がん化学療法剤の大型商品である米イーライリリーのジェムザール、サノフィ・アベンティスのタキソテールも年末に特許切れとなり、注射薬後発品に強いホスピラ社などが市場進出しそうな気配だ。
(The Pink Sheet 1月25日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから